癌二重特異性抗体で5年内治験へ
協和発酵キリンは、がん領域で2つの異なる抗原に結合するバイスペシフィック抗体(二重特異性
抗体)の開発に乗り出す。現在、前臨床試験段階にあり、5年以内の治験入りを計画している。同社
は新たな創薬基盤技術として核酸医薬と二重特異性抗体の2つの開発に注力していく方針。
同社が開発しているのは、がん治療に用いる二重特異性抗体。通常の抗体医薬は結合する抗原が1
種類だが、バイスペシフィック抗体は2種類の抗原に結合できるため標的への特異性が高まり、治療
効果に優れた抗体医薬の創出が期待できる。
すでに候補化合物を選定し、実験動物を用いたin vivo試験で評価している。前臨床試験で薬効が
認められれば、生産技術の確立や毒性試験などを経て、5年以内の治験入りを目指す。がん治療用と
して開発しているが、標的とする抗原は明らかにしていない。
同社は低分子医薬や抗体医薬に続く新たな創薬基盤技術として、核酸医薬の開発にも着手してい
る。独自の脂質ナノ粒子をドラッグデリバリーシステム(DDS)に使用した核酸医薬で、がん治療向
けに3年以内の治験入りを計画している。
同社の佐藤洋一取締役常務執行役員・研究開発本部長は「次の開発フォーマットとして、核酸医薬
と抗体医薬の応用版である二重特異性抗体が有力なツールだと考えている。開発に向けてかなりの経
営資源を投下している」という。
また、同社は抗CCR4抗体モガムリズマブに続く腫瘍免疫治療薬候補の開発にも着手している。
「有望な候補化合物が2〜3ある」(佐藤常務)としている。
(化学工業日報 2016年2月1日)