ph変化で細胞増殖 群馬大研究グループ がん制御の解明に期待
群馬大生体調節研究所の研究グループは25日、ヒトを含む動物組織の細胞の内外で通常は中性に保
たれている水素イオン指数(ph)が変化することで、細胞の増殖や分化が強力に促されることを発
見したと発表した。ph変化と組織の成長に密接な関わりがあると突き止めた。ph変化はがん細胞
でも起きることが知られていたが、その影響は不明だった。研究グループは、がん細胞の爆発的な増
殖を引き起こす要因の一つではないかと推測。研究を深めれば、がん細胞を制御する仕組みの解明が
進むと期待している。
ph変化に着目して動物の体の発生過程を検証した。ニワトリの胚の「尾芽領域」から成長を促す
情報が発信され、数日のうちに体幹部が形成される現象が起きているとき、尾芽領域の細胞内がアル
カリ性になりがん細胞に似たph変化を起こしていることを解明した。
このph変化が迅速な体幹部の形成を促していることを突き止めた上で、ヒトのiPS細胞でも同様
の変化が起きて成長を促していることを解明した。
研究グループは同研究所の荻沼政之助助教、石谷太教授ら。筆頭著者の荻沼助教は「よく知られた
phというものが、動物の体の発生に重要な役割を持っていることが分かった。がん細胞におけるp
h変化の意味を知るヒントも得られた」と述べた。
論文は25日(日本時間)に英科学誌「ネイチャー」に掲載された。
(上毛新聞 2020年6月26日)