がん細胞塊に血管再現 京大グループなど装置開発、薬剤効果検証で期待
がん細胞の塊を新たにできる血管を含めて再現するシリコンゴム製の装置を開発したと、京都大な
どのグループが7日発表した。血管を通してがんに作用する抗がん剤の効果を検証することに生かせ
るという。成果は国際科学誌「バイオマテリアルズ」に掲載された。
がんの中には新たな血管ができ、血液から栄養分を得て進行し、血管を通って移転する。一方、薬
剤開発の効果を確かめるために以前から使われてきたがんのモデルでは、血管を再現できていなかっ
た。
京大工学研究科の横川隆司教授や東北大の梨本裕司助教らが、100円玉大のチップ形状の装置を開
発した。直径1ミリの穴にヒトの乳がん細胞を、周囲に血管の細胞などを置いて培養すると、数日で
がん細胞の塊の中に血管ができた。
血管内に抗がん剤を流すと、抗がん剤の濃度が低い場合ではがんの増大を止められなかった。一
方、血管内における抗がん剤の流れを作らない状態では、濃度が低い場合でもがんは小さくなった。
薬剤の効果を検証する際に、血流の影響を考慮する重要性が示されたという。
横川教授は「従来のがん細胞塊のモデルと合わせて使うことで、より生体に近い形で薬剤の効果を
検証できる」としている。
(京都新聞 2019年11月8日)