がん「領地」拡大の仕組み解明 正常細胞死なせ割り込む
将来がんになる細胞(前がん細胞)が、周囲の正常な細胞を押しのけて「領地」を拡大させていく
仕組みを、大阪大などの研究チームが解明した。この仕組みを妨げることができれば、将来的に、が
んを早い段階で治療できる可能性があるという。
前がん細胞は、正常な細胞より早く分裂し、その結果がんをつくる。だが、細胞同士は満員電車の
ようにぎゅうぎゅう状態で隣り合っているため、好き勝手に領地を広げられない。前がん細胞がどう
やって領地を広げるのかは分かっていなかった。
ショウジョウバエのサナギを使った実験で、突き止めた。前がん細胞は周辺の正常細胞が死ぬよう
に促した後、「空き地」になった場所を獲得するため、自身の細胞のサイズを大きくし、正常細胞と
の間に割って入ることがわかった。割り込みやすくするため、細胞の形を巧妙に変化させていること
も確認できた。その後、細胞分裂を進め、さらにがんを大きくしていくとみられる。
同大の藤本仰一准教授(生物物理学)は「前がん細胞が正常細胞の間に割り込めないようにするこ
とができれば、がんの超初期の治療につながる可能性がある」と話す。論文は米科学誌カレント・バ
イオロジーに掲載された。
(朝日新聞 2018年7月4日)