腫瘍免疫薬候補EP4拮抗薬の治験開始
小野薬品工業は、腫瘍免疫治療薬候補であるEP4拮抗薬「ONO−4578(開発コード)」の
治験を国内で開始した。同社が自社創製した腫瘍免疫治療薬の臨床段階入りは、抗PD−1抗体「オ
プジーボ」(一般名・ニボルマブ)に次いで2つ目。低分子化合物としては初めてとなる。将来的に
はEP4拮抗薬と抗PD−1抗体の併用療法の開発も視野に入れている。同社は腫瘍免疫領域のトッ
プランナーとして同2剤に続く薬剤の開発も加速していく方針。
ONO−4578の国内第1相臨床試験(P1)を1月から開始した。まずは単剤投与試験で同剤
の安全性を確認する。
同剤は生理活性物質であるプロスタグランディンE2(PGE2)の受容体の一つであるEP4の
拮抗薬。腫瘍の微小環境では、がん細胞がPGE2を産出している。PGE2の受容体が単球上にあ
るEP4で、PGE2と結合して活性化すると単球が免疫抑制作用を有するM2型マクロファージへ
と分化してしまう。同剤はEP4受容体を選択的に阻害することでM2型マクロファージを減らし、
がん細胞を攻撃する細胞障害性T細胞(CTL)が働けるようにする。
小野薬品が自社創製した腫瘍免疫治療薬の臨床段階入りは、免疫チェックポイント阻害剤・抗PD
−1抗体オプジーボに続く2例目。同剤の腫瘍免疫領域の低分子化合物としては初となる。
同社は「化合物オリエント」と呼ばれる独自の創薬手法を展開してきた。疾患領域を特定せずに整
理活性物質などから創製した化合物が有効性を示す疾患を探索して製品化するもので、とくにプロス
タグランディンに関連した創薬に強みを持つ。
ONO−4578も同社が長年培ってきたプロスタグランディン創薬の知見を腫瘍免疫領域に応用
して開発した。
同社の相良良暁社長は同剤について、「現時点ではオプジーボのように腫瘍免疫領域の主役となる
薬剤にはならないかもしれないが、他の薬剤と併用することで抗腫瘍効果を高める薬剤になるだろ
う」と期待を込める。将来的にはオプジーボとの併用療法の開発も検討する。また、同社は複数の腫
瘍免疫治療薬候補も開発中。「まだアーリーステージだが、開発を加速していきたい」(相良社長)
としている。
(化学工業日報 2017年2月28日)